1972年、祖父の国ギリシャを訪れ、パルテノン神殿の遺跡に立ったアメリカ人化学者ジョージ・サランタコス博士は、2500年も耐え抜いた石造物を見て、その偉大なる耐久性に驚き、
大きな疑問を抱いた。現代のコンクリートの早期劣化に対し、なぜ、2500年も・・・。
博士は、石柱をつなぐ古代の天然セメントを調査・分析した。そして二つの事を確認した。
一つは現代のセメントの代わりに、古代人は火山灰と消石灰を使ったこと、もうひとつは、その中の遊離アルカリ成分が皆無に近いという事実であった。今日のコンクリートに、平均約20%の遊離アルカリ成分が含まれている。
それらが他の物質に対し、きわめて高い反応性を示し、その反応物質がコンクリートの劣化、ひいては鉄筋の酸化の大きな原因となる。
博士はコンクリート中に含まれる遊離アルカリを除去し、なおかつ火山灰(天然ポゾラン)に匹敵する成分を加える方法を、広く探し求めた。
ヒントは古代自然科学にあった。ギリシャ古代に萌芽し、アリストテレスの博物学、アレキサンドリアの諸科学で最高潮に達した、自然科学のその”カギ”を見い出した。コンクリートに塗布すると直ちに深く浸透し、基質中の遊離アルカリ成分と反応し、疎水性無機物で、空ゲキを充填する、あの火山灰に似た物質。コンクリートに恒久性を与える物質。この博士の解明が、ハイドロサームの誕生となった。
古代ギリシャ人からの大いなる遺産、自然科学の結晶。
それがハイドロサームである。